こんにちはノモトです。
今回は、先日行われた世界陸上2022オレゴン大会で感じた、陸上競技について話していきます。
その中でも花形種目である男子100M走において、「日本人が世界で勝つ為に必要なこと」に触れていきたいと思います。
日本代表のサニブラウン・ハキーム選手が日本人史上初めての決勝進出を決めたことにより、一層注目度の上がった今大会の決勝戦。
もしかしたら、メダル獲得の可能性もあるかも?と思われた試合でしたが、順位は7位と惜しくもメダル獲得とはなりませんでした。
予選では9秒台をマークしていただけに、日本人選手でも決勝の舞台に立てるんだという希望を、日本全国の陸上選手やファンに抱かせることができたと思います。
これから先、サニブラウン・ハキーム選手や現在の日本のトップスプリンター、そして現在一歩一歩努力を積み重ねている学生選手たちが、どうすればメダル争いに食い込めるか、それについての考えをまとめました。
- どうしたら世界大会でのメダリストのように速く走るようになれるのか
- 9.9秒台の壁を越えるにはどうすればいいのか
- 日本人選手が世界大会でメダルを獲得できる日は来るのか
など、こういった問題解決の参考になっているはずです。
また、陸上競技以外にもサッカー・野球・バスケット・ラグビー・テニスなど、走ることが必要な競技を行っている方にも必見の内容になっているはずです。
ぜひ、今回の記事も最後まで見ていってください。
過去の大会から見る決勝進出選手たちの特徴
世界陸上が創設された1983年ヘルシンキ大会から、前回の2019年ドーハ大会までの決勝戦を見返してみるとある一つの特徴に気づくことができます。
それは、アメリカ代表選手のメダル獲得数の多さ!ではなくて、圧倒的に黒人選手の比率が高いということです。
陸上競技やスポーツに少しでも精通している人なら、「黒人選手は足が速い」というのは当たり前であると思うかもしれません。
しかし、過去の大会から遡って数えてみるとその比率は圧倒的に偏っているので驚きです。
以下、簡易的な計算なので正確かどうかはあしからず。
今回は、わかりやすく、黒人選手(アフリカ系・ハーフも含む、以下●)、白人選手(ヨーロッパ系、以下○)、黄色人選手(アジア系、以下●)の3つに分類しています。
以上が、過去大会から今大会までの比較になります。
驚くべきことに?決勝進出選手の90%以上が、黒人選手になっているんです。
ちなみに●の2つは、蘇ヘイテン(中国)選手です。
(サニブラウン・ハキーム選手はハーフのため●に分類)
国を背負って競い合う世界大会なので、ここまで意識して見ている人も少ないと思います。
(なんとなくわかっている人は多いかもですが。。。)
アメリカやジャマイカ、カナダにイギリスなど、メダリストの多い国もありますが、100m走に関していえばメダル獲得者は全て黒人またはハーフの選手になるんです。
日本人選手がメダル争いをするのは不可能?
日本でも最近では様々なスポーツで、足を速くすること(足が速いこと)の重要性に気づき始め、スプリント専門のコーチをつけて走り方の改善を図るチームや個人も増えてきました。
具体的なトレーニング方法などは、教える人によって異なるので細かくは分かりませんが、おそらく筋力トレーニングやフォーム(走り方)の改善、陸上選手がよく行うミニハードルやマーカーなどを用いたドリルを行うことがほとんどでしょう。
実際にこれまで走り方にこだわっていなかったり、スプリントの練習をしてこなかった人(要は走ることの素人)が上記のようなことを行うと、少しは速くなることはあります。
しかし、こういったトレーニングを行えば世界のトップスプリンターのようなスピードを獲得することができるのでしょうか?
答えは、、、言わなくても分かりますよね。
加えて、もともと足が速い人や足が速くなる素質を持っている人が上記のようなトレーニングを行うとその効果を体感できることがあるため、それを基に一般向けにも同じようなトレーニングを推奨したり実際に行うことがあります。
しかし、もともと遅い人が同じことを行ったとしても、足が速くなることはありません。
(50mを8秒台で走る人が7秒台、7秒台の人が6秒台になることはあったとしても、5秒台になることはありません)
なので、もともと素質のない人がいくら努力をしたところで100mを9秒台、さらには50mを5秒台で走ることすらできないのが現実です。
「過去の大会から見る決勝進出選手たちの特徴」で述べた通り、決勝進出選手の9割以上が黒人やハーフの選手に対して、日本人(黄色人)は黒人やハーフなどの選手に比べて素質が劣る以上、いくら血の滲むような努力をしたとしても、その先には100m走においてメダル獲得はおろか、決勝進出すらままならないというのがわかると思います。
要するに、現状の延長線上には日本人(黄色人)がメダルを獲得することは限りなく不可能であるといえてしまうんです。
日本人がメダルを獲得するための方法
日本人がメダルを獲得することは不可能であると述べましたが、それで終わってしまっては今回の考察には何も価値はありません。
なので、ここからはメダルを獲得するための方法について触れていきます。
どうすれば、日本選手を100m走でメダルを争うレベルに引き上げられるのか。
過去の大会から今回の大会までを振り返って、この方法しかないな、という3つの打開策を紹介します。
打開策①
一つ目は、日本も他国と同様に「黒人選手やハーフの選手をスプリンターとして育てていくこと」です。
今大会のサニブラウン・ハキーム選手もそうですが、ハーフの選手はアジア系の黄色人よりもアスリート能力に秀でているケースが多いため、そういった選手の積極的な受け入れや、育成年代での取りこぼしを減らすということが、単純にレベルアップに繋がるからです。
昨今では、陸上競技以外の様々なスポーツにおいても黒人選手やハーフの選手が増え始めていて、日本代表でも少しずつ人種の混同化がスタンダードになってきているので、この流れを崩さずに一人でも多く代表レベルまで取りこぼさないようにしていくこと、これがとても重要になります。
他国を見れば分かりますが、多くのスポーツにおいて身体能力の平均値が高いアフリカ系の黒人選手またはハーフの選手がトップオブトップのレベルで活躍しています。
鎖国文化が根強かった日本では他国に比べて遅れをとっていますが、日本のスポーツ界でも他国では当たり前になっているこのようなことが、よりスタンダードになれば日本スポーツ界のレベルも必然的に向上していくはずです。
その延長線上には、世界陸上やオリンピックで100m走のメダリストが生まれる可能性は大いにあると思います。
これが打開策の一つ目になります。
打開策②
二つ目は、日本において「100m走を国技にする」ということです。
日本の人口は、世界的に見ても多く、とりわけスポーツをしている人口もアメリカや中国といったマンモス国家以外と比べると非常に多い傾向にあります。
しかし、日本においての国技と呼べるスポーツは、日本の伝統的スポーツの相撲と、プロスポーツとしてのレベルが世界的に見ても高い野球の二つの競技に限られる感じがします。
(相撲界には独特の文化や競技特性上のものがあるため、プロアマ問わず競技人口そのものが少ないですが、日本古来のスポーツとして日本国内では今でも根強い人気があります。今回は相撲に関しては、少し例外として扱います)
サッカーや最近できたバスケットボールのプロリーグは、国内での人気や注目度はそれなりに高いですが、プロ野球に比べると見劣りするのが現状(一部のチームを除いて興行として成り立っているのか疑問)で、世界的に見た時のレベルも海外のトップリーグよりも劣っているのが正直なところです。
そして、100m走に関していうと、認知度は高いものの、他のスポーツと比べるとアマチュア競技の枠にとどまってしまいます。
(日本のトップオブトップの選手の中にはプロ選手として活動している人もいます)
子供時代にどのスポーツを行うのかという基準の一つとして、国技として認知され人気のある野球を選択する子供が必然的に多くなり、且つその中で活躍できる子達(個人能力の高い選手)がプロ選手を目指し、その中の一部がプロ選手になります。
その結果、プロ野球選手は他の競技に比べると個人のアスリート能力の平均値が、他のプロスポーツよりも高くなる傾向にあります。
(チームスポーツというよりも個人競技の特性が強いのも要因の一つです)
ちなみに日本国内において、サッカーの競技人口は野球よりも少し上回りますが、チームスポーツとしての特性が強いため(特に最近のサッカーはより戦術先行型になっているため)、個人のアスリート能力がそこまで高くなくてもプロ選手になれることもあります。
(他にもたくさんの理由はありますが、説明が長くなるため割愛します)
またスポーツ大国であるアメリカを見てみると、アメリカでは4大スポーツ(アメフト・野球・バスケット・アイスホッケーorサッカー)に人気が偏るため、ほとんどのスポーツ少年少女はこれらのスポーツを選択します。
クロススポーツの文化もあるため、秋はアメフト、春はバスケット、夏は野球(例えです)というようにシーズンごとに行うスポーツも変わり、個人としてのアスリート能力の高い選手はこれらのスポーツの中から自分に向いているスポーツを選択し、プロ選手として活動していきます。
(僅かですが、中にはプロ選手として他の4大スポーツの競技を掛け持つ人もいます)
なぜ4大スポーツに競技人口が偏るのかというと、それはプロスポーツとしての興行が一際成り立っているからです。
(NFLやNBA、MLBで動く金額は日本のプロリーグとは比較になりません)
当然、アメリカで育つ子供たちも、そういった華やかな世界で活躍している選手に憧れるわけですから、選択する競技も自然と4大スポーツに偏るわけです。
一方でアメリカにおける100m走はどうでしょうか?
確かにオリンピックや世界陸上で一番盛り上がる花形種目ではありますが、4大スポーツに比べるとアマチュア競技の延長線でしかないように映ってしまうため、本当に能力の高い選手が100m走に流れているのかどうか、という点は想像に容易いと思います。
特にNFLやNBA、そしてMLBでは異常なまでに能力の高い選手がひしめき合っています。
そういった選手が陸上競技を専攻していた場合、陸上競技の世界記録も違った形になっているという意見は昔から言われていることです。
(大谷選手やダルビッシュ選手、そしてイチロー選手などがトップオブトップで活躍していることは他の競技と単純比較すると本当に凄いことです)
それでも、世界大会でのメダリストの多くを輩出していることを考えると、アメリカ国内の人口の多さに加えて黒人やハーフの比率の高さはもとより、能力自体の平均値が圧倒的に日本よりも高いというのが容易に考えられます。
従って、日本において100m走のレベルを向上させるためには、他の競技に流れるはずであった様な人材を取りこぼさない様に、相撲や野球を凌ぐような国技として全国民で取り組む姿勢を一から見直し、競技人口そのものを増やし、競争率を高めることこそが、世界大会でメダルを争うためには必要になるのではないかと思われます。
打開策③
上記で説明した打開策は、割と各方面の専門家などからは既に挙がっている意見でもあるので、特別変わったアイディアではありません。
ただどちらの打開策も他力本願であり多大なる労力が必要になるため、100年単位の時間が必要になると思います。
なので、いずれの打開策も限りなく不可能に近く、あくまでも世の中がこうなることができればメダルを取れる可能性はあるよね、という話になります。
しかし、今大会の決勝戦にサニブラウン・ハキーム選手が進んだことは打開策①が少し形として現れたということにはなります。
(政策として意図したものではない様に思えますが)
打開策①は②に比べると、自然現象的で偶発的な側面もあるため、もしかしたら近い将来、日本国籍を持つ凄い黒人選手やハーフの選手がメダル争いをする可能性はあります。
しかし、上記のような受動的な立場で、今後の行く末を偶然を頼りに何もせずに見守らないといけないのでしょうか?
しかしそれでは、スポーツに関わる身としてはかなり寂しいですし、日本人が100m走でメダル争いをする姿を今生の間に見てみたいと言うのが率直な意見です。
そこで、この方法なら選手も指導者も能動的な姿勢でメダリストを育成することができるという3つ目の打開策を最後にご紹介します。
今大会に限らずですが、過去大会から決勝に出場している選手にはある共通点がありました。
それは「重心の位置が非常に高い」ということです。
重心の位置が高いという事は、走行中に接地足(着地足)を体の重心が越えやすくなる為、前進するために発揮されるエネルギーを効率よく使うことができます。
その為、より加速しやすく且つ失速しずらい状態になり、100mの区間を最高のエネルギー効率で走り切ることが可能になります。
逆に重心の位置が低ければ、エネルギー効率が悪くなり、いくら筋肉が発達していようとも、走り方が綺麗であっても、大して速く走ることはできません。
今大会でもそうでしたが、世界大会の決勝に出てくるような選手たちは、世界トップクラスに重心の位置が高い選手たちの集まりでもあります。
要するに、足の速さというのは「重心の位置で決まる」といっても過言ではないのです。
冒頭で述べましたが、よく足の速さを向上させるためのトレーニングとして、走行フォームの改善を行ったり、筋トレを行ったり、ドリルなどを行うことがありますが、正直それらを行っても、根本的な体の重心位置が改善されていないことには飛躍的にスピードを向上させることはできません。
逆に言えば、重心の位置を高くすることができれば、速く走ることが可能になり、世界大会でも活躍できるような選手になれる、指導者であればそういった選手を育てられるようになります。
どのようにして黒人やハーフのトップスプリンター達のような重心位置の高さを手に入れるのか、この部分をトレーニングのセンターピンにしていくことこそが、能動的にトップ選手になることやトップ選手を育てていくことに繋がっていきます。
まとめ
最後にここまでの話の内容をまとめると、
男子100M走において、「日本人が世界で勝つ為に必要なこと」について世界陸上の過去大会から現在までの傾向とパフォーマンスを向上させる指導者としての立場からの考えと3つの打開策を提案しました。
これまで同様にただただひたすら努力をするということは止めにして、根本的なところから改善させないことには一向に未来は切り開けません。
選手であれば今行っているトレーニングの一つ一つに対して、なぜこのトレーニングをしているのか、そして必要なのかと自分自身で考えて改善していくこと。
指導者であれば、慣行的に行ってしまっているトレーニングの一つ一つを見直して、本当に必要なものなのか、本当に選手の志にかなった指導を提供できているのかを今一度見直さないといけません。
僕自身、選手を指導する立場の人間として、どのようにすればその選手の才能以上の能力を獲得させられるかを常に考え、指導技術のアップデートを重ねています。
パフォーマンスアップのための本質に着手して、そのためのトレーニング指導を行っているので、僕の指導を受けている人の中からはそのうち、様々な競技のトップレベルの選手が輩出されていくことになると思います。
この記事を偶然ご覧になった人の中からも、トレーニングに対しての考えや方法を少しでも進化させるキッカケになったら幸いです。